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鈴木心写真館、松陰神社前の小さな旅#3 「SABLIM hair make」

松陰神社前駅から、徒歩5分。「外から入る光が綺麗なお店」と聞いて、日が暮れかける18時にお伺いすると、住宅街の中に西陽を浴びるお店がありました。今日は写真館スタッフのゆもとが髪をカットして頂きながら、オーナーの志賀仁さんとSABLIMの歩みについて、お話を伺いました。(ゆもとのビフォー写真入ります、ごめんなさい)

20年間、世田谷。

−このお店は、いつオープンしたんですか?

「もうすぐ、今年の10月で3年になります。それまで何軒かの美容室で働いていて、ここをオープンしたときに独立したって感じです。」

−あの、切るときに全然話さないお客さんと、すごい話すお客さんっていますよね? 話しているとやりづらいとかってあるんですか? 大丈夫ですか?

「いや、全然そんなことないです。」

−そうですか。普段切るときも思うんですよ、話したほうがいいのか、黙ってたほうがいいのか…

「お話して、ライフスタイルとかが見えたほうが、髪型も提案しやすいですよ」

−今日に限っては、わたしが志賀さんのライフスタイルをお伺いしようと思ってるんです(笑)。このお店を出すときは、ピンポイントで松陰神社前でやろうって思ってたんですか?

「そうですね。元々18歳で東京に出てきてから、駒沢、上町、用賀…と、ずっとこの近くに住んでいて、松陰神社前の空気が好きだったので。大きな駅前とかにお店を出すことに興味がなかったんですよ。騒がしいところよりは…陸の孤島みたいなところで、長くやっていきたいなという思いがありました。」

−ここのお店は、どこの美容院も登録してるような口コミサイトに載っていないのも、あえてですか? 今ってそういうサイトから予約できて、初回だけ安いみたいな美容室がほとんどだな、って思っていて。

「そうですね(笑)。そういう商売の仕方はしたくなくて。」

−お客さんは、お近くの方が多いんですか?

「はい、松陰の他には若林、世田谷、上町、あとは駒沢からも。それと、前に働いてた乃木坂のお店のお客さんで、今はここに来てくださっている方もいます。松陰神社前も色んなお店ができているので、そういう方々はお散歩したり、カフェに行ったりするのも楽しみに来てくれているみたいです。」

震災、きっかけ。

−18歳に東京にでてこられたときは、美容師になるぞって思って来たんですか? 

「はい、専門学校に進学するために…専門学校は新宿だったんですけど、駒沢に住んでいたいとこが物件探してくれたんです。」

−なるほど、それからずっとこのあたりにお住まいなんですね。3年前に、独立するぞってなったのは、何かタイミングがあったんですか?

「そうですね…色々…震災があったときに、後悔しないようにしたいなって、思ったんです。それまで、どっちかっていうと行動力がないタイプだったんですよ。腰が重いというか。漠然と、いつか店持ちたいなあとは思っていて、いつか帰りたいなあとも思ってたんです。で…なんていうんですかね…」

−ご実家、心さんと同じく福島だと伺いました。

「もう帰れない場所です。お墓参りとかするときとかだけ、申請すれば入れますけど、実家にいた家族はもう引っ越しています。向こうに戻って店やりたいなあって思いながらも、タイミングもなくて、そうしてるうちに震災もあって、気付いたらこっちにきてからのほうが長くなってました。ただ、自分の店持ちたいなって気持ちは……震災のことで拍車がかかったっていうのはあって、もう帰れないなら、場所はこのへんかなって。」

−どんなところでしたか、ご実家は。

「すごい田舎ですよ。ど田舎です。海があって、山があって、それだけです(笑)。」

ふくしま、とうきょう、そして。

−志賀さんは、どうして美容師になろうと思ったんですか?

「えっと…ファッションが、好きだったんです。そういうカルチャーが好きで、そこから髪型とかにも興味を持つようになって…で、なんか、オンリーワンなことをしたいと思ってたんですよ。なんていうんですかね…オンリーワンっていうのは、お客様にとって…うまく言えないんですけど」

−他のひとではとって代わることができない、前のお店のお客さんが、今志賀さんに髪を切ってもらうために松陰神社前まで来てくれている、みたいな…

「そういう仕事がしたかったんです。」

−福島のその、田舎にいて、ファッションが好きになったきっかけってなんだったんですか。

「僕、兄が二人いるんですけど、その兄たちがファッションが大好きで、仙台に服を買いに行ってたんですよ。それを見て育ったんで、なんか僕も必然的に。」

−じゃあ、その頃から東京に出たいなって思ってましたか?

「思ってましたね。実は、うちの実家が、写真館なんですね。」

−ああ、そうなんですね、写真館!

「兄がその写真館を継ぐっていうので、渋谷にある写真の専門学校に進学したんです。夏休みとかは、東京の兄のところへ遊びに行くようにもなって。その頃、美容師になりたいって親に言ったら、めっちゃ反対されたんですよ。僕は絶対美容の専門学校に行くって父を説得したんです。でも、反対されてるのに金銭面で迷惑かけたくなくて、福島か、仙台あたりの美容学校行こうと思っていたら、父が「どうせやるんだったら、東京へ行け」って言ったんです。「あ、じゃあ東京行こう」って(笑)。やっぱり東京、行きたいと思ってたんですよね。」

−ああ、そうですよね。やりたいことやり通すって決めたなら、気を遣うなってことなんでしょうね…それは、すごく素敵なご両親ですね。

「感謝してますよ。…写真館でスタッフをしているんですよね? 写真が好きなんですか?」

−あ、はい、写真が好きです(笑)。美容師さんもお忙しいのに、お仕事がすごく好きなひとが多いなって思うんです。本当に好きじゃないと、というか、大変さを超えられるひとじゃないと、振り落とされちゃうんじゃないかなあって。

「そう、同窓会行っても、美容師してるひとは半分以下ですよ。みんな全然違う仕事してるひとばっかりです。……いい仕事だと思うんですけどね。人対人の仕事で、お客さんに直接喜んでもらえる仕事だし。技術職なので、できなかったことができるようになるのもすごく嬉しいんです。その分、練習しないといけないんですが。」

−練習自体も楽しかったですか?

「楽しかったですよ。はい、楽しかったです。始業の3時間前とかに行って朝やるんです。夜はすぐ帰ってました(笑)。絶対朝のほうがいいと思うんです。集中できる。営業終わると一旦スイッチ切れちゃうんですよね。」

人と人と。

−ご実家の写真館のお仕事を見てて、どうでしたか?

「いい仕事だなあって思っていました。写真館も「このひとに撮ってもらいたい」ってお客さんが来る仕事じゃないですか。オンリーワン。だから、いいなあって思ってて、…いや、実は兄が継ぐって言い出す前は、僕が継ごうかなって思ってたんですよ。そしたら、兄がやるって言い出したので、じゃあ違うことやろうって思ったくらいで。」

−このひとに切ってもらいたいって思ってもらえるのも、このひとに撮ってもらいたいって思ってもらえるのも、わたしはすごいことだなあって思います。

「本当に、そうありたいですね。」

−ファッションが好きで、東京に憧れて上京してきて、最終的に「陸の孤島で」っていう結論に行き着いたのって、どうしてだったんでしょう。お店の名前も「Simple and Beauty, Less is More」ですよね。

「なんでしょうね…年齢のせいもあるかもしれないですけど、本当に気づいたらシンプルになっていったんです。ファッションも、色んな服をあれこれ持つんじゃなくて、同じような服を何枚も持ったりとか。”Less is More”っていう言葉が、すごく好きで。少ないことは豊かである。そういう精神で生きていきたいっていう思いも、いつからかありましたね。」

−ご自宅もこんな感じ、なんですよね、きっと。

「そうですよ、めっちゃシンプルです。掃除がしやすいんですよ(笑)。」

削ぎ落としたところにある、美しさ

「髪は、こうやってドライヤーで乾かして、毛先は遊ばせる感じだと、癖が活きてきますよ。」

−ああ…昔からわたし、癖っ毛なのがすごくいやで。縮毛矯正してたこともあるし、ヘアアイロンも小学生のときから使っていて。コンプレックスなんでしょうね。

「あ、じゃあやっぱりまっすぐにセットしたほうがいいですか...?」

−いやいや、なんか…写真館もそうなんです。顔とか体型って誰でもコンプレックスあるじゃないですか。だから普段の写真だとどうしても自分が思う決め顔とか決めポーズになってしまう。

「ああ、なるほど。」

−そこを突破して、そのひとが知らなかったそのひとの魅力みたいなものを引き出せなかったら、鈴木心写真館で撮ってもらう意味ってなんだろうって思っていて…。それと同じような。癖もそのままで活かせますよ、って提案してもらえるのが、嬉しいなと思ったんです。

「ああ、ふふふ。そうですか。絶対、これは悪い癖じゃないですよ。こんな感じで、ちょっとワックスとか使ってみてください。もうちょっと切ってもいいですか? 時間、大丈夫ですか。」

最後まで、丁寧にカットをしてくれた志賀さん。アフター写真を撮ろうとしていたら、何度も「あ、待って!」「ごめんさない、もう1回いいですか」と毛先を直しにきてくださいました。

あまり好きでなかった自分の癖っ毛も、肩肘張らない、わたしだけのスタイルになる。お店も、ひとも、髪型も「Simple and Beauty, Less is More」というコンセプトを体現する美容室、SABLIM。静かな住宅街で、広々とした居心地の良さに肩の力が抜けるし、優しい笑顔の志賀さんとの対話には、時折訪れる余白にこそ耳を傾けたくなる。そんな「陸の孤島」は、志賀さん自身がオンリーワンだからこそ、お客さんも、「オンリーワン」になれる場所。

SABLIMの志賀さん、ありがとうございました!
(記事:湯本愛 写真:高木亜麗)


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「撮った日が記念日!」出張写真館として約100箇所、23625名以上を撮影。神田小川町にコーヒーの日を開店する。http://ps.suzukishin.jp 出張鈴木心写真館 1/25-26東京
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