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鈴木心写真館、松陰神社前の小さな旅。#4 「'OLU'OLU」

世田谷線を降りてすぐのノスタルジー漂うアーケード街に、その店はある。スタジオジブリのアニメーションに出てきそうなその佇まい。切り盛りする和田さんと岡崎さんもまた、その登場人物のような雰囲気を持っている。

外からは民家のように見えるが、ガラス戸を開けると、木のぬくもりを感じさせる小さなカフェが。正面に構えられたショーケースの中には、丁寧に作られたドーナツやパンが並ぶ。

店のメインは、ふんわりともっちりがほどよい塩梅のイーストドーナツ。日替わりで、7〜8種類が並ぶ。酵母を使い、卵の代わりに牛乳で練られた、いわば牛乳パンのような生地。水分や発酵時間の差もあるが、これを揚げるか焼くか、それがドーナツとパンの大きな別れ道なのだという。

元は会社勤めをしていた和田さん。当時、岡崎さんに連れられて行った代々木上原のハリッツで、そのドーナツに魅せられた。「こんな店を自分もやりたいと思って」。きっかけは、意外にも衝動的。「ハリッツの方にもどうやったらできるのか相談するところからスタートして、そこからは独学です」その雰囲気とは裏腹な、類稀なる行動力が店の誕生を現実のものに。

「会社を辞めてからも準備に2年ほどかかり、その頃はお尻に火がついた状態でした」と、当時を振り返る。「昔から二人で食べ歩いたりするのは好きで。現在店で扱っているコーヒーは堀口珈琲さんのものなのですが、お店をやるときには使わせてほしいと以前からお願いしていたんです」好きなものを揃え、好きなものを作るというスタンス。そして、2009年にオープン。

作れるものを、作れる分だけ。「種類をたくさん揃えようにも二人でできることは限られています。準備をするだけで終わってしまう。だから、少しずつ、できるものから出していくスタイルです」という和田さん。「同じものを常に出すのは難しい。中身も自分たちで作るので、決めても出せない日もある。日替わりなのは、私たちにとって都合がいいんです」と笑うが、そうやって生み出される数々のドーナツが人を魅了し、足を運ばせる。

「世田谷線、小田急線沿線あたりで探していたら、偶然見つかって。このロケーションも良かったですし、自分たちで内装もやりたいと思っていたのでそれが叶う物件だったので」という通り、あたたかさのある店内装飾。和風ノーマンロックウェルをイメージし、これもまた、自分たちでゼロから作り上げたという。

当初から、近所の子連れ客が多く来店しているという。「以前より商店よりもマンションなどの住宅が増え、他の街からいらっしゃる方よりも地域の方がさらに増えた気がしますね」

イートインタイムは、二人がサービス可能なタイミングだけ。「自分たちが見せたいのはドーナツ。そういう意味ですごく我儘かもしれません」最も重要なクオリティを担保するために、やるべきことだけをやる。それを全うするために徹底された姿勢を、二人から感じる。

あと一年しか生きられないとしたら?という問いに、「好きでやっているから、飽きるまでこの店をやりたい」と答える和田さん。一方、岡崎さんは「いろんなところへ行きたい」と回答。きっかけを与えた岡崎さんと、それに突き動かされる和田さんのバランスもまた、大変興味深い。

「特別な日には別のものを、そうでない日にはこのドーナツを。普通の日に食べてもらうものを作っていきたいんです」という和田さん。コストをかけた豪華なおやつでなく、飾らないものを。日常こそ特別である、そんな気づきを与えてくれる優しい店である。

ハワイ語で「心地よい」という名が表すとおり、そこにはいつも変わらず心地のよい時間が流れている。明日も明後日も、また食べたくなるドーナツとともに。(記事:末松早貴 写真:鈴木心)

'OLU'OLU(オルオル)
東京都世田谷区世田谷4-2-12(Google Map

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ありがとうございます!覇王翔吼拳!!!
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「撮った日が記念日!」出張写真館として約100箇所、23625名以上を撮影。神田小川町にコーヒーの日を開店する。http://ps.suzukishin.jp 出張鈴木心写真館 1/25-26東京
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